金継ぎ教室に通ってわかった漆のこと

お気に入りの森山窯の梅皿が割れてしまった…!
“金継ぎ”という方法があるのは何となく知っていたので教室に行ってみた。

一回の教室が2時間✕月2回を1年半通い、18点ほどの器を直してきた。

初めは金継ぎに漆を使う事も知らず、
漆器にもあまり興味が無かった…

そんな金継ぎ初心者の私が、教室に通ってみて知ったことをまとめてみた

金紛(消し粉)で金継ぎした森山窯の梅皿

 

へー! と思った金継ぎの話

「本漆金継ぎ」と「簡易金継ぎ」の違い

金継ぎには2種類の方法があるらしい。

本漆金継ぎ

  • 天然の漆を使う日本の伝統的な修繕技法
  • 漆の乾燥に時間がかかる
  • 天然素材且つ昔からの実績があるので、直接口に触れても安心

簡易金継ぎ

  • 合成漆や、合成接着剤、合成樹脂を使った現代の科学的な方法
  • それほど気にする必要もないレベルだけど、成分に鉛を含んでいたりして安全性は保障されていない
  • 乾燥が早いので短時間で仕上げる事が可能
  • ホームセンターなどでキットが売ってるので初心者も気軽にチャレンジ出来る

※ちなみにどちらの方法で接着しても電子レンジでの使用はNG!

 

余談ですが『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』に登場する、
カイロ・レンの修繕した“割れたマスク”に注目して見てほしい。
J・J・エイブラムス監督が参考にしたのが、日本の金継ぎなのです♪

取り扱い注意! かぶれる事もある

乾いてない漆に素手で触れるとウルシオールという成分で、かぶれる事がある。
皮膚科に行っても有効な薬が無いため、かゆみを我慢するしかないらしい。
教室では必ずビニールの使い捨て手袋をして作業をしている。
私はまだ一度もかぶれたことが無いが、なぜか男性の方がかぶれ易いとか…
しっかり乾燥して漆が硬化してしまえば、かぶれる事はないのでご安心を。

 

湿度が高いほど乾燥する!?

空気が乾燥した冬場の方が乾きやすそうなイメージだが…それは間違い!
漆の固まる最適な湿度は70%〜85%くらい。
ウルシオールと空気中の水分が結合し硬化するのだ。
意外にも冬より夏の方が漆は固まり易い。
「漆風呂」や「漆室(うるしむろ)」と呼ばれる木製の箪笥の様な箱の中で、
湿度と温度を保つ事が出来る。

 

金だけじゃない! 色々な仕上げ方

金継ぎと言うからには金で仕上げるのでは? と思っていたが、
他にも色々な方法がある。

  • :粒子が細かくマットな質感の「消し粉」と、磨いてピカッと仕上げたい場合は粒子の大きな「丸紛」など用途によって使い分ける
  • :わりと金に近い色合いで、お手頃な価格なので使いやすい
  • :白い磁器に良く合う色味。お手入れしないと黒くなる
  • プラチナ:薄いグレーの様な色味。銀の様に変色はしない
  • 漆仕上げ:漆に顔料を混ぜた「色漆」で仕上げる方法。弁柄(赤)や黒、白、緑、黄、青などの色がある。混ぜて器にあった色を調整する事も可能

 

そもそも漆ってなに??

ウルシ科の植物から採取した樹液を精製した、天然樹脂塗料。
既に縄文時代には接着材や塗料として流通していた。

元々中国で生息していた漆の木が縄文時代かそれ以前に日本へ持ち込まれ、
栽培・管理する様になったと考えられる。
誰がいつ日本に持ち込んだかは謎…

10〜15年かけて育て、その後一本の木から採れる漆の量はたったの200mlほど!
国産の漆は希少で高価だが、それよりは安価な中国産の漆も流通している。

ざっくりした金継ぎの工程

私が習っている、漆を使って割れたお皿や欠けた部分を修理する
“本漆金継ぎ”の工程はこんな感じ。

step
1
麦漆(むぎうるし)


小麦粉と漆を混ぜると噛んだガムみたいなネバネバの茶色い麦漆ができる。
それを割れた破片の断面に塗り、くっつける

 

step
2
乾燥


漆風呂で乾燥させる

 

step
3
錆漆(さびうるし)


砥の粉(砥石の粉)と漆を混ぜると黒っぽい茶色のパテのような錆漆ができる。
それを陶器の欠けた部分に埋めていく

 

step
4
乾燥


漆風呂で乾燥させる

 

step
5
中塗り


錆漆の凸凹を削って中塗り用の漆を塗る

 

step
6
乾燥


漆風呂で乾燥させる

 

step
7
上塗り


更に上塗り用の漆を重ねて塗る

 

step
8
紛蒔き


金粉(消し粉)を綿にとり、漆の上にポンポンっと定着させる

 

step
9
乾燥


漆風呂で乾燥させる

 

step
10
紛固め


テレピン油と漆を混ぜた薄い茶色の液体を、金粉の上に塗って拭き取る

 

step
11
乾燥


漆風呂で乾燥させる

完成!

 

これがざっくりした工程。
見ての通り“乾燥”がやたら多い!
教室では3つくらいの器を同時進行で作業。
工程が多く乾燥にも時間がかかるため、仕上がるのに何ヶ月もかかる。

だけど手塩にかけて金継ぎした分、器たちには愛着がわくもの。
これからも思い出の詰まった大事な器は、修繕して使い続けたいと思っている。

 

 

-
-, , , , ,

© 2024 みちすがら