民藝 窯元・工房

祝 リーチ・ポタリー開窯100年!『リーチ先生』原田マハ著を読んでみた

今年、2020年は陶芸家バーナード・リーチと濱田庄司がイギリス、セント・アイヴスの地に、西洋で初めて東洋式の窯“リーチ・ポタリー(The Leach Pottery)”を築いて100年という記念の年なのです!!

3年ほど前に書店で『リーチ先生』という本を見つけて即買いしたものの、読まずにず〜っと本棚に飾っていた私。(なぜならこの本、とても分厚いのです…)

やっと重い腰を上げて読み始めると、とっても面白かったので今回は開窯100年を記念して、この本をご紹介しようと思います!

リーチ先生 [ 原田 マハ ]

佐藤直樹さんが手掛ける装丁が素晴らしい、見た目にも美しい本です。

 

あらすじと内容 (※ネタバレあり)

昭和29年春。小鹿田(おんた)の地は、イギリスから来日する陶芸家バーナード・リーチを出迎える準備で賑わいでいた。
沖高市(おきこういち)少年は父の死後、小鹿田の陶工 阪上家に弟子入りして1年になるが、毎日畑仕事ばかりで退屈していた。
陶工達が陶芸の指南を受けるひと月の間、リーチの世話役を引き受ける事になった高市。
リーチの仕事を間近で見るうちに、高市は陶芸の道を志す決心をする。
やがて窯焚きの晩、高市は思い掛けずリーチから亡き父の名を耳にするのだった。

物語は明治42年に逆上る。
高市の父、沖亀之助(おきかめのすけ)がリーチの弟子となり、白樺派との関わりや陶芸との出会い、中国移住、イギリス帰国、リーチ・ポタリー設立までを読者と共に歩む事となる。

2013〜2015年にかけて『信濃毎日新聞』などの学芸通信社配信の新聞に掲載していたものを2016年に単行本化した史実に基づいた“アートフィクション”。

 

実在した登場人物たち

白樺派の柳宗悦、武者小路実篤、志賀直哉をはじめ、彫刻家の高村光雲、息子で詩人の高村光太郎、陶芸家の富本憲吉、濱田庄司、河井寛次郎、6代目尾形乾山など有名な文化人が出てくるので彼らを知っているとテンションが上がります。
因みに高村光太郎はジブリ風のイケメンに仕上がっているので、登場する度にニヤけました笑

 

物語の舞台となった場所

①プロローグの舞台「小鹿田(おんた)地区」

物語のはじまりは、大分県日田市の北部にある小鹿田焼の地。
江戸時代中期から10軒の窯元が一子相伝でその技術を守ってきました。
現在9軒ある窯元は、その全てが開窯時から続く柳瀬家/黒木家/坂本家の子孫。
10月に開かれる「民陶祭」では多彩な陶器をおトクな産地価格で購入できます。
飛び鉋(とびかんな)や刷毛目(はけめ)などの技法が特徴的な小鹿田焼は、国の重要無形文化財にも指定されています。

2016年に小鹿田焼の里を訪問した際に印象的だった、「ぎいい、ごっとん」と響く唐臼(からうす)の音。水流の動力で土を砕く。

 

飛び鉋の模様を削った後、乾燥させている様子。

 

②白樺派たちが暮らした「我孫子(あびこ)」

大正時代から昭和初期にかけて多くの文化人が別荘や居を構えた千葉県我孫子。
柳宗悦は25歳の時に我孫子へ移住し、1921(大正10)年までの7年間を「三樹荘(さんじゅそう)」で過ごしました。
手賀沼の周辺には志賀直哉邸、武者小路実篤邸があり家族ぐるみの交流をしていました。
リーチは柳に誘われ三樹荘の敷地内に窯を築いて作陶をするも1919年、窯の焼失を機に我孫子の地を離れました。

柳宗悦邸跡 ※敷地内は非公開
出典:我孫子インフォメーションセンターより

 

③窯を開いた地「St Ives(セント・アイヴス)」

イングランド南西端にあるコーンウォール州セント・アイヴスはアーティストが多く住む町として有名です。
1920年創立のリーチ・ポタリーは現在でも製陶所として運営され、博物館やギャラリーにもなっています。
リーチと濱田庄司が1923年に作り上げた登り窯は1970年代頃まで使用され、その後は博物館で展示されています。
2008年には新しい製陶所が増設され、リーチの意志を継ぐ陶芸家たちが製作に励んでいます。

出典:Leach Potteryのウェブサイトより

 

物語にも出てくる暖炉はリーチ・ポタリーの博物館内にあります 出典:Leach Potteryのウェブサイトより

 

読書家でない私は、この本を2週間くらいかけて読み終えました。
あくまでもフィクションなので実際の出来事と比較してみると面白いです。
民藝や白樺派に興味がある方にはもちろんオススメですが、そうでない方も物語として楽しめる一冊です!

また、リーチ・ポタリー開窯100年を記念して、濱田庄司が作陶の拠点を置いた益子の地では『益子×セントアイヴス100年祭』が開催される予定でしたが、コロナウイルスの影響により1年後に延期となりました。

若手陶芸家の育成を目的とした「リーチ工房研修プログラム2020」の取り組みでは、益子の若手陶芸家2名(えのきだ窯の榎田智さん/岩下製陶の岩下宗晶さん)をリーチ工房へ派遣する予定です。

100年という時を経ても、リーチと濱田庄司の様に日英の文化的交流が続いているなんてすごい事ですよね
イベントは延期となってしまいましたが、来年の開催を楽しみに待ちたいです♪

 

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